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2008年 02月 11日

エジソンの誕生日に

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その町は冬でもあたたかいところでした。
どれぐらいあたたかいかというと、
町のどのお店にも、マフラーが売っていないのです。
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そんな町に、35年ぶりの雪がふったのは、
'メンロパークの魔術師 -The Wizard of Menlo Park-'がうまれたのと同じ日でした。
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丘の上にある図書館(としょかん)の中庭で。
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チャーリーは古い石版(せきばん)をみつけました。

(つづく)
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# by flower_tea | 2008-02-11 21:15
2007年 12月 22日

寒くて美しい夜に

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12月の、もっともにぎやかな夜に。
子ぶたが、ディナーの支度をしていると、シャーリーから電話がかかってきた。
「遅くなってごめんなさいね。
 やっとお仕事が終わったの、今から丘をおりてバスターミナルまで行きます」
子ぶたは、最近作り方を覚えたばかりの'ふたご座パン'を、すでに焼き終えていた。
シャーリーの帰宅が予定時刻より遅れるのはいつものことだけど、
今夜だけは、「ただいま」の声と同時に、
オーブンから焼き上がったパンを出したいと思っていた。
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 コーンスープ
 マリネ
 タラモサラダ
 チキン
 ふたご座パンとモロッコパン、
 そして、チョコレートケーキ
すべての準備が整った時に、またシャーリーから電話がかかってきた。
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「今、バスターミナルでね。お友達に会えたの。
 もうすぐ帰るからね、あと少し待っててね。
 みんなで一緒にたべましょう。
 でも、どうしても我慢できなかったら、先に食べててもいいのよ。」



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寒くて、美しい夜に。
チャーリーが、長い旅から帰ってきた。
あたかいご飯のあるところに。

May the season bring you the music of laughter, the warmth of friendship, and love.


(第2部・シャーリー編・おわり)
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# by flower_tea | 2007-12-22 07:52
2007年 12月 18日

見つからないCD

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実際、子ぶたにはクリスマスというものがよくわかっていなかった。
「たくさんのご馳走の後でも、胸をはってケーキを食べてもよい日」
という事ぐらいは、知っているけど、でも、そんなのは毎日のことなのだ。

「どこにも行きませんよ。」
シャーリーは子ぶたに、静かに言った。
「その日はお仕事だもの、夜には帰ってきますよ。」


「何を作る予定なの?
 コーンスープ、いいわね、
 あなたの作るコーンスープは、とびきりおいしいから。
 あとはチキンのハーブソテーとか、モロッコパンがあれば完璧ね」
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シャーリーは図書館の館長を悪い人だとは思っていない、
むしろ高く評価している。
本と本を愛している人達を、心底愛している人だ。
でも、12月に館内蔵書整理をする習慣だけは、改善してほしいと思っている。
12月になると音楽ホールでは、夜ごとに素敵な演奏会をしているというのに。
この町では、音楽会は毎晩8時開演と決まっているので、とても間に合わない。
毎年、プログラムを見ては、ため息をついてあきらめるのだ。
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大きな三つ星が夜空でひときわ明るくなる頃に帰宅すると、
子ぶたがクリスマスのための準備をしている。
「気が早いのね、毎晩毎晩、何を仕込んでいるの?」
子ぶたは、パンのための天然酵母と格闘していた。
キッチンをいそいそと動き回っている子ぶたの口には、
チョコレートがついている。

シャーリーには、もはや食事を作る気力はなくて、
仕事で疲れた頭と腕 ーそう、本は重いのだー を、休めることにした。
食欲もあまりなくて、ハーブティーだけを飲んだ。
夕方、館長が職員にふるまってくれるキッシュで、お腹はいっぱいだった。

  ああ、何か忘れている、それが何か思い出せない、
  もうねむい

昼間仕事をしているときに、
「Amazing GraceのCDはどこにしまったかしら」
と、'評論’のカウンター脇で思いついたけど、
すぐにそれを忘れて仕事に没頭してしまった。
図書館の本ばかり片付けても、
自分のCDは見つからないのだ。
だいたいそんなCDは、クリスマスが終わった頃に、
キッチンのすみで見つかることが多い。
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# by flower_tea | 2007-12-18 00:08
2007年 12月 11日

とくべつなチョコレート

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シャーリーと一緒に暮らしている子ぶたは、計算が得意だ。
火曜日と金曜日だけ、ピンセット工場で、働いている。
月曜日は決して働かない。
だって、そんなことをしたら、日曜日の夜が辛くなるから。

水曜日は、パン教室で、パン作りを教わっている。
木曜日は、パン教室で、パン作りを教えている。
どちらの日の朝も、シャーリーは、
「たのしんできてね」
と言ってくれる。
まるで違うことのようだけど、でも、どうやら、
教えることは教わることなのだ、
と、最近知った。

ピンセット工場にいる、おしゃべりなおばさんーおっぱいがメロンパンのように大きいーが、
「お願いがあるんだけどね。」
と、話しかけてくる。
でも、そのお願いが何かわかるまでには、とても長い話をきかなくてはならない。
いつも、そっけないぐらいに用件だけを伝えてくるシャーリーとは大違いだと思う。

同居するパートナーとして、シャーリーは最適だと思っている。
でも、一つだけ困ってしまうことがある。
それは窓の外、遠くに見える電波塔をたまに見ては、彼女がため息をつくことだ。
そんな時、子ぶたは肉球とやわらかい鼻を、シャーリーに押しつけることにしている。

毎日必ずすることは、洗濯をすること、ラジオの天気予報を聞くこと、
パンを焼くこと、砂時計は3往復、
そしてチョコレートを食べること。
チョコレートは買わなくても、シャーリーのお友達ー遠くに住んでいるらしいーが、
たまに送ってきてくれる。
そのチョコレートを食べることで、子ぶたは、世界が素敵だと知る。
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# by flower_tea | 2007-12-11 22:34
2007年 12月 06日

手紙の文字

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シャーリーはカフェで過ごす時間が大好きだ。
ぼーっとしたり、本を読んだり、もちろん、お茶やケーキを楽しんだり。
カフェでないとできないことがある。
手紙を書くこと。
自宅で手紙を書くと、なんどか重い内容になってしまうし、
旅先では、手紙ではなくて、カードだし。
遠くに住んでいるお友達に手紙を書くのは、とても楽しい。
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自分の文字は決して好きではなくて、美しい文字を書ける人をいつも尊敬してしまう。
美しい文字というのは、絵のようだと思う。
とても美しい。


ごぶさたしています、元気ですか?
あっというまに12月ですね。

私が働いている図書館は、この町で一番高い丘の上にあります。
どうして丘の上に作ったかって?
本を読んで目が疲れた人には、
気分転換できる見晴らしのいいテラスがあるべきだ、
と、館長が主張したのです。
でも、借りた人が本を返しにくるのに、丘をのぼるのは大変でした。
そう、本は重いから。
だから、パン屋通りの広場から、無料送迎バスが出ています。
本を読む人には、とっても評判のいい図書館です。
いつか遊びに来てね。

私は仕事が終わった後は、いつも歩いて丘をおります。
残業しているからバスは終わっているし、雨が降っている時は、
お友達の車に乗せてもらうこともあるけど、そうでなければ、必ず歩きます。
夜はとても冷える町だけど、星はいつもきれいです。

先日あまりに星のきれいな夜に、ホームズ彗星を眺めていました。
ずっと空を見上げていた時なのかな、鍵をなくしてしまったの。
大事なのは鍵ではなくて、キーホルダーです。
あなたの国に遊びに行ったときに買ったものなの。
そう、あなたの息子さんが選んでくれた、ピーナッツのキーホルダー。
とてもかなしかったけれど、その夜は小ぶたが、
モロッコパンをわけてくれたので、楽しくなってしまったの。
本当は悲しむべき夜だったけれど、モロッコパンの味にはかてませんでした。

次の手紙は、クリスマスカードです。
ピーナッツが好きな息子さんに、クルミのカードをおくりますね。
                     
シャーリー

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# by flower_tea | 2007-12-06 22:38
2007年 11月 29日

ジゼル

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シャーリーは仕事が終わった後、音楽ホールにでかけた。
この町では、バレエの開演も音楽会と一緒、夜の8時から。
ジゼルというバレエを観た。

結婚を前に死んでしまった娘たちが森の妖精になって、
夜中に迷い込んでしまった人々を死ぬまで踊らせる、というお話がもとになっている。

婚礼の前に亡くなるなんて、本当に悲しいお話だ。
シャーリーは、この物語が好きではないのだ。
それなのに、ジゼルの公演があると、いつも出かけてしまう。
色々なバレエを観てきたけれど、ジゼルの第2幕は格別だ。
美しいウィリー(妖精)たちに囲まれて踊る、ジゼルとミルタ(妖精の女王)は、
本当に本当に美しくて、いつもひきこまれてしまう。
非業の死をとげるのは嫌だけれど、でもあんなに美しい姿で踊れるなら、、、


なら、なに?
シャーリーは、こわい思いをしながら、いつもジゼルを観ている。
そして、うっとりと満ち足りた気持ちになる。
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# by flower_tea | 2007-11-29 21:38